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映画 アリス・クリードの失踪 [映画]

登場人物三人だけの誘拐劇
ということで
三人だけなら混乱もないだろうし
なにしろサスペンスは大好物なので鑑賞決定

だから
犯人二人と被害者一人しか出てこない
誘拐のお話らしいですよ?

アリス・クリードの失踪

小さいスクリーンではあるものの
八割以上埋まってます
おお

内容も素晴らしいです
何しろキャラと演技が最高に楽しい

注意すべきは
これは
誘拐ミステリではなく
誘拐を舞台にした心理サスペンスである
という部分で

斬新な誘拐トリックがあったり
新機軸の現金受取り方法が出てきたりとか
一切ありません

犯罪の内容が誘拐である点が重要なので
ミステリのつもりでみると
納得できなかったり無意味な部分が多いと感じるかもです

さらに心理サスペンスというと
知恵比べ的なものを想像しがちですが
相手の気持ちを推し量りきれずに疑心暗鬼にとりつかれて
またさらに誤解の種をまく
というタイプなのでそこも間違いのないように

賢いつもりのバカが大変な目にあう話が好きな人にお勧め

これバカが懸命にやってるのが犯罪だから面白いけど
まじめなバカが仕事で上手くいかないみたいな展開されたら
切なすぎて泣いちゃうかも
恐ろしくて泣く可能性もありそう

ラストシーンも素晴らしいです
筋はドシンプルだけどキャラ配置で
娯楽作として楽しい出来になりました

こういうの大好きです

うれしそうにバカを語るネタバレ込みの感想は以下

展開のおもしろさがメインの舞台劇的な作品なので
見る予定の人は読まない方がいいです

F1010056.jpg


オープニングは黙々と何かの準備をする男二人組の行動が
きびきびと描かれます

無言でちゃくちゃくと準備を進める彼らの姿を見ると
なにやら凄い計画をたてているかのようです
防音材を壁に貼りドアに鍵をいくつもつけ
ベッドや車に金具を取り付け
時計を掛け変えたりします

これは何かいろんな事の伏線になってんのかな?
とワクワクします

ずっと無言で準備をする二人の
最初の台詞は誘拐決行の直前
OK
行くぞ
って確認する場面
クールです

女性を一人誘拐して作ったアジトに連れ込み
あっという間に裸に剥いて
写真を撮ったら
別の服を着せる
とか
被害者に直接暴行するでもなく
しかし心を一気に折る
無駄のないスマートな誘拐犯という佇まいです

ところが
物語が進行していくと徐々に二人の真実の姿が
見えてきます

次の会話が
メール送った?
うん送ったよ送った送った
とかバカっぽいやりとりで
あれ?
と思わせられるのですが

派手な準備の割にはやっていることは普通の誘拐です
時計の付け変えや壁紙貼りやいくつもの鍵は
何かを想定して
といった事でもなさそうです

これつまり
秘密基地を楽しく作ってたバカ二人組という風に
見るのが正しかったんじゃないかと

犯人の二人組は中年男性と若い男性で

体力勝負だから飯を食え!考えるな!食え!と

いやがる若者の口にパンをねじ込む
中年男性が主犯に見えますが

そこまでやった直後に
怒るなよ?
とか変なフォローが入るとか
二人の関係にプロフェッショナルさが感じられない場面が
徐々に増えていきます

被害者は若いんだかそこそこいってんのか
よくわからないくらいの女性アリス・クリードで
いきなり裸に剥かれるわトイレを要求したら
し瓶を用意されるわで自尊心がずたずたにされて
気の毒です

さて
物語は若い犯人だけが残っている時に
被害者女性にトイレの大きい方を要求されて
展開しはじめます

中年犯人より甘さの見える若者犯人は
一人でPCに残された被害者の裸写真を見て
苦い表情を浮かべるなど
弱さが見え隠れします

そんな彼しかいないときに大便要求です
バケツとトイレットペーパーを用意してやらせますが
見られてたらできないと言われ
後ろを向いてしまいます
銃を持った手をプラプラさせたまま

だめだこいつ

バケツでぶん殴られて落とした銃を奪われて
一発撃たれた弾丸は壁にめり込みます

ここで犯人から出る言葉

まってまって!俺だよ俺!

なんと
どうやら被害者の彼氏です

わはは

被害者が金持ちの父と仲が悪い上に
遺産がもらえないとグチっていたのを知っていた彼氏が
ムショ仲間の立てた計画にのっかって
彼の推薦で彼女をターゲットに選んだ
ということを被害者に教えます

あくまでも君ためにという調子で

もちろんぶちぎれる彼女

金がもらえるんだから耐えられるだろ!
事前に言ったら相棒にばれちゃうから仕方なかった!

いまいち納得しづらいいいわけを繰り出す若者犯人

結局相棒が帰ってきてしまったので
銃を返してもらって縛り直す若犯人と
渋々縛られるアリス

さあ
三人の関係に疑惑の種がまかれました

若者は中年を裏切り
被害者は若者に騙されている状態です

その後
撃たれた銃のやっきょうが床に転がっていた事から
まさかのスプーンを巡るアクションやら
適当に証拠隠滅しようとしたら
うまくいかずにトイレで大パニックやら
若者犯人のうかつっぷりバカっぷりが
さらなる波乱を予感させます

このトイレのシーンのくだらなさとか最高
同時に
小さなことすら処理できない無力さに切なさ爆発

さてここに来てさらに意外な展開として
この犯人二人

できてました

男同士ですよ?

しかもどちらかというと中年犯人の方が
若い子にぞっこんです

あんなに偉そうだったのに
彼を見る目が潤んでるよ!

若犯人はバイだったのか
さて
ということは
若いバカが一番精神的に有利なポジションにいるのか?

そして
序盤で裸に剥いた女に見向きもしなかった中年犯人は
クールな犯人というわけでもなく
単に趣味ではなかったってことなのか?

どんどん最初のクールな犯人像が
バカで下世話な人たちの集まりになっていきます

こんなバカで問題の多そうな二人でも
事件は順調に進行しているようで
今日も中年犯人はでかけます

その間に被害者といちゃつく若犯人
いったいこいつはどちらに見せている顔が本物なのか
単に独り占めするつもりなのか
どんなパターンもありそうに見えます

そんな油断ならない若犯人が
女といちゃついてすっかり油断して手錠をかけられます
もうほとんどドリフ乗りで
だめだー油断しちゃダメだーって声援気分

さあ
立場逆転
全裸でベッドに手錠でつながられる間抜けな若犯人

おいちょっとどうして?
とか聞いちゃいます
バカだから

バカじゃないの?
当たり前でしょ?
恋人のためにつって
その愛する恋人を誘拐して全裸にしたり
し瓶で用をたさせたりするなんて事するとかできんの?
というもっともな反論

さあ
拘束から解き放たれた彼女は
喜んで脱出を試みますが
彼女もまた賢いわけではないので
ドアに鍵がかかっているのを知って絶望して
携帯が置いてあるのを見つけて警察に電話して
自分がどこにいるのかわからないので絶望して
逆探知を待つ時間が惜しいからってんで
そうだ!扉の鍵の場所を教えてもらおう!と
電話を切って無造作にポケットにしまって
銃を持って若犯人を脅しにいきます

全裸でベッド脇に立つ若犯人おもしろい
けつをこっちに向けた姿勢で首だけこちら向きで
考え直せ!

完全優位なアリスですが鍵一つとるのにもたついて
まさかの立場逆転
殺される勢いで気絶させられた被害者は
再度ベッドへ

ふう
元通り

元通り?

帰ってきた相棒が
何か変わったことは?と聞きますが
別になにも
と返すしかない若犯人
そりゃそうだ

でも変わったことだらけだよ!

ここじゃ変わったことだらけなのに
事件の方はどうやらさらに順調で
ついに現金引き渡しステップまで進行しました

さあ
若犯人は
そして
被害者は
どうしようというのか!

何も知らないおっさんは大丈夫なのか?

さて現金を受け取った後に開放するための倉庫に
アリスを移動させるために
被害者ベッドルームに移動すると
アリスが目を覚ましません
動揺する中年犯人
なにしろクールなのはポーズなので
ものすごく慌てます

気付け薬で
あっさり被害者は息を吹き返しますが
中年犯人は張っていた緊張感が切れてしまったようで
すっかり萎れます

ここからがメインなのにこいつがやる気を出さないと
どんな計画もうまくいかないし
そもそも被害者がぐったりしてたのは自分せいだから
なんとかしないと!

若犯人が懸命に励ましてなんとか元気復活!
中年犯人は若犯人に車を出すように命じて
その間に被害者を運ぶための準備をしようとします

なんて面倒な中年なんだ

さて
ここで
ベッドにつながれた被害者の服から
転がり落ちる携帯電話

なにこれ?
知らない知らないと首を振る被害者
調べると警察に電話された形跡
お前がやったの?
知らない知らないと首を振る被害者
すっかりパニックのおっさん

いろんな手段で口を割らせようと試みると
アリスもまたバカ故にぼろぼろとこぼれる真実

心底へこむ中年犯人

本当に若者の事を信じていたみたい

ところがこの中年も戻ってきた若者を
問いつめたりはしません

意味ありげな質問はしますが
計画は続行するようです

ここで
全員が誰も信じられない状態になりました

そのまま繰り広げられる最後の駆け引き

いざとなると知恵もなにもなく泣き落としを試みる三人

相手を裏切りつつ
自分は最終的に信じてもらえると思いこむ図々しさ

それぞれ理解できる不信のポイントはあって
その不信故に裏切ることで
相手もまた不信を抱くというネガティブ連鎖

どこまでも甘く自分勝手な愚者達の心理戦

それぞれバラバラになります

それでも誘拐事件自体はなんと驚くべき事に無事成功
あとは最終的な勝者を決めるラストファイトとなるわけですが
ここでも全員
迂闊だったりバカだったり脳天気だったり卑屈だったり図太かったりお人よしだったりで
二転三転する運命

当初は誰も怪我せずに終わらせるつもりだった事件が
予定とは全く異なる結果に落ち着くという
基本通りの展開です

計画を立てた二人は殺さないことで
だれも傷つけない計画だと思っていたようですが
あの彼女の扱いで彼女自身は確かに傷つき
そのため若い犯人の思惑も崩れるし
協力できない協力者の計画が上手くいくはずもなく
ボロボロと崩れていく様がバカ丸出しで最高です

一つの齟齬を起点にして人間関係における認識の違いが
このおもしろい悲劇を生みだした
という全体の構図もぴたりとはまって爽快です

何しろ全員うかつでバカなので
この映画においてちょっと不思議に思う点も
まぁバカだからなぁと許せてしまう感じです

一番の謎として
なんで誘拐がうまくいったのか
というのがありますが
それはもう
うまくいっちゃったもんは仕方ない
という事で一つ

さて
ラストシーンについて書くために
ネタバレしますが

ラストは
犯人二人が死亡して
ボロボロだったアリスが金を持って逃亡
というオチになるのです


そこに
アリス・クリードの失踪
というタイトルがまた表示されるわけです

オープニングでは誘拐の被害者としての失踪ですが
ラストでは金を持って自由を手に入れて
自分で失踪する
という意味になっているわけで
こういう所をちゃんとやってくれると
おお!って気分になりますね

楽しかったです

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